2.「オーストラリアンシェパードのしつけ」

ぼくは子犬の愛犬を迎えてすぐに、メンター的な役割を期待して出張で来てくれるドッグトレーナーを頼んだ。犬との接し方やしつけの仕方など、実際に目の前でやってくれることで、声音や身振りなどとても参考になった。

また学者が著した犬の本も参考になる。人と犬では認知の仕方が違う部分がけっこうあって、犬に何かを伝えようとする時にそれを犬が理解しているか、に気をつける必要があるのだとぼくは学んだ。

「伝え方」については、犬を不必要に威圧してしまったり、犬が理解していないのに理解していると勘違いしてしまったりする恐れもある。これはトレーナーも教えてくれることだと思うが、知識として現在ほとんど一般化されている研究を元に書かれた本を何冊か読んでみるとわかりやすい。

この一冊、としておすすめするなら、

原書房 アーダーム・ミクローシ 著「イヌの博物図鑑」

2019年の本で、この一冊を読めば現在イヌについてわかっていて一般の飼い主が理解しておくべき情報を把握できると思う。この本の中で「イヌはおそらく、人と普通のコミュニケーションを取りながら暮らすだけで人が望む行動を学習してくれる」という旨の記述は、今のぼくの犬に対するスタンスの元になっている。

そう、しつけや基本的なコマンド(お座りや伏せなど)について、「イヌは勝手に学習してくれる」と今のぼくは考えている。

少なくとも愛犬に関しては、トレーナーやぼくらが意図的に教えたことはもちろん、他にも様々な場面でぼくらの反応から、入ってはいけない場所や、やってはいけないこと、小さな子供との接し方、などなどぼくらが意図せずに勝手に学習してくれた。ぼくはイヌという動物がこれほど凄いとは思ってもみなかった。

この「イヌは人の反応から勝手に学習してくれる」という点は、様々な飼い主が様々な考え方で犬をしつけて飼っているのにも関わらず、ほとんどの場合それなりに上手くいく理由だとも思う。ようはどんな風に接しても犬は人に合わせて行動を学んでくれる稀有な動物なのだろう。

犬を初めて飼う場合、こういったことはわからない。ぼくもイヌというまったく未知の動物を少しずつ理解してきた感がある。

 

しつけについては、いわゆる「問題行動」にどう対応するかも犬と暮らす上で重要な部分だと思う。

問題行動は飼い主がその行動をどう捉えるかで問題行動ではなくなる場合もある。また元々その犬種が仕事として行っていたような本能的な行動であったり、発達の過程で不可欠な行動であったりする場合もあるようだ。一概に「問題行動」と言えない点がこの問題を難しくしている。

愛犬の場合、ぼくらが「問題行動」と捉えたものは、a「人が好き過ぎて飛びついてしまう」、b「散歩中、白い小型犬にだけ吠える」、c「散歩中、匂い嗅ぎをしたくてどうやっても引っ張る」など。

aは辛抱強く「ノー」と伝え続けていたら、愛犬が一歳の頃からやらなくなった。今でもテンションが上がると抑えられない時があるようだが、ほとんどの場合、飛びつかずに擦り寄るだけになってくれた。

bはかなり限定的な状況だが、愛犬が子犬の頃、散歩していて白いチワワにめちゃくちゃに吠え立てられてから、愛犬は「白い小型犬」が嫌いになったようで、白い小型犬と散歩していてかち合うと吠え立てるようになってしまった。これも根気強く「ノー」と言って制止することをずっと繰り返してきた。2歳になった頃からようやく吠えずにスルーすることが出来るようになってきている。

cは犬にとって嗅覚は人の視覚と言えるほど重要なものだから、こちらは小走りになったりして疲れるが愛犬に合わせて出来る限り匂い嗅ぎをさせてやるようにしている。人通りの多い街中や横断歩道などを歩く時のみ、リードを短く持って愛犬を横に付けて歩いている。

aは「人が大好きだから」、bは「過去に嫌な思いをしたから」、cは「本能的な行動」と原因について考えてみると"そうなるのもわかる行動"だと思う。

しかし人と暮らす上ではお互いに譲歩し合わねばならないから、根気強く教え続けたり、こちらが妥協して合わせたりして対処してきた。

ぼくの対応は時間のかかるやり方かもしれないが、現在の愛犬から「問題行動」と感じるものはほとんどなく、お互いにそれなりに協調して過ごせていると思う。けっきょくは犬も人も学習していく動物なのである。(3に続きます)

 

(あくまで我が家のオーストラリアンシェパード一頭と接してきた中での感想です。「問題行動」も嚙みつくなどの危険な行動はさらに踏み込んだ対応が必要になるだろうと思います。)