育て方から考える絶対音感の話

たまには音楽の話を書こうと思う。音感について、自分の経験や知っていることなどをまとめます。

 

楽器をやる上で、得意な部分と苦手な部分は誰にでもある。ぼくは音感に苦手意識を持ってきた。そしてリズムをよく褒められた。だからリズムを出来る限り伸ばし、音感は「人並みまでは高めたい」と考えてきた。

苦手だからこそ音感についてよく考えてきた面はあると思う。トレーニングも積んだが、もともと音感が得意な人にはとうていかなわない。悔しい思いもあるが、自分の得意を伸ばすことでカバーしようとしてきた。

そんな経験もあり、自分の娘が絶対音感を持っているとわかった時は「俺の娘が音感が良いとは、、」とけっこう驚かされた。そして「本当は自分も音感が苦手なわけではなかったのでは?」と勘繰った。

 

そもそも絶対音感とはどういうことだろう?(以下Wikipediaから引用させていただきます。)

絶対音感(ぜったいおんかん、英語:Absolute pitch)は、ある音(純音および楽音)を単独に聴いたときに、その音の高さ(音高)を絶対的に認識する能力である。記憶に基づいてその音を楽器を使ってもしくは音楽学用語で示すことで、この能力を有することが示される。

楽器をやっていると「私は絶対音感です」という人によく出会うから、そこまでありがたみを感じなくなってしまうが、絶対音感が何に役立つかと言うと、

絶対音感保持者は、次のようなことをする際にも、絶対音感を保持しない人より容易にできる。

  • 耳で知っているだけの曲を楽譜なしで正確に楽器で再現する。
  • 早く12音音楽や無調音楽などのソルフェージュができる。
  • 無調の聴音で一個ぐらいずれても、すぐに途中から正しい音高に持っていく。

曲を聴いて楽譜なしで演奏することはポピュラーの楽器ではよくあることだと思う。ギターでも「耳コピ」とよく言うが、絶対音感がなくともそれはできる。しかし、絶対音感がある人は圧倒的に早く耳コピが出来るので便利である。

そして楽器を習得していく上でもっとも便利なのが以下の点だと思う。

絶対音感を身につけると、音楽を学んだり楽器を演奏したりする際に有利であると言われる。たとえばピアノのような演奏すべき音符が絶対的に多い楽器では、絶対音感があると曲に習熟すると同時に暗譜が成立し、しかも音が頭の中に入っていればキーを見失うことなく反射的に正確に打鍵できるので、技術的に非常に有利である[6]。

このように暗譜が自然となされることは、同時に何曲も取り掛かることが出来て上達の効率がとても良い。

 

ここまで絶対音感を持ちあげてきてしまったが、ぼく自身は是が非でも娘に絶対音感を身に着かせたいとは思っていなかった。絶対音感にはそれなりに不便な点もあり、楽器をやる上で必須ではないと考えているからだ。

そもそも音感が苦手なぼくは、「子供には少なくとも音感に対する苦手意識だけは持ってほしくないな」とだけ考えていた。それは子供との接し方、態度などの「育て方」に通じるテーマで、ぼくは絶対音感などどうでもよく、「育て方」にフォーカスしてきたにすぎないのである。

 

ーーー「育て方」に関して、わが子の歌に対して「音痴」とか「音が合っていない」とか、「○○は歌が下手だな」とか、悪気はなくともぽろっと言ってしまいそうになる時はないでしょうか?

この長い記事でぼくが書きたいことはただ一つ、この点である。

音感に限らず、他の様々な能力について、子供にとって親からの否定の言葉は、厳しい書き方をすれば「呪い」のようになってしまうことがある。

例えば、3歳の子供が楽しそうに歌を歌っている。しかしどう聴いても音が合っていない。その時、絶対に「音痴」や「歌が下手」などと言ってはいけない。その言葉は子供の中に生涯残り、本来は音感が苦手ではなかったはずの子供が本当に音感が苦手になってしまう。

子供への言葉かけは細心の注意を払うべきものだ。特に幼児期はその後、その人の無意識となるような心の芯の部分が作られる時期。その無意識の基盤に生涯その子はコントロールされると言っても過言ではないように思う。

大人は自分で何かを選択しているように思っていることが多いが、実際は「自身の無意識によってそう選択するようにコントロールされている」とも言える。同じ物事に対したときにどう感じるかが人それぞれであるように、無意識が人生に及ぼす影響は本当に大きい。

 

幼児の歌については、特に発声の機能が十分に発達しておらず音痴に聞こえてしまう場合が多いようにぼくは思っている。発達には個人差が当然あって、同じ3歳でも良い音程で歌える子と、音程をちゃんと発音できない子がいる。それは聴覚や声帯などの身体的な発達の個人差にすぎない。

だから、子供の歌の音が合っていなくても、「○○は良い声で歌えてるね」とか、「元気いっぱいで楽しくなるよ」とか、ポジティブな言葉かけをして、子供の発達を大らかな気持ちで待ってあげることが大切だと思う。

そうやって苦手意識を持たずにいつも気分よく歌っている子は、歌うことで自然に音感を鍛えていく。そしてピアノなどの楽器に触れて正確な音程を体感すれば、それを思い出すかのように家でもどこでもよく歌い音程を身に着けていく。その繰り返しが結果的に音感の良さや、絶対音感の獲得に繋がることもあるのだと子育ての経験からぼくは考えている。

 

長々と書いてしまいましたが、娘も小さい頃は歌の音が合っていないことが多かったです。その時に、つい「音が合っていないよ」などと指摘したくなってしまった経験がぼくにも妻にもあります。その時に上記のようなことを考えて指摘する言葉を飲み込むことができて良かったと思っています。そんな経験からこのような記事を書きました。

音感が良い人にとっては世の中は音楽に溢れていて、頭の中にも常に音楽があり、音楽や楽器との距離がとても近いのだろうとぼくは思います。感じている世界が違うのでしょうね。"音感が苦手な"ぼくは羨ましくて仕方ありません😅